説明しよう!このブログは株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」における、防人八葉の大活躍の日々をつづるものなのだ!
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さわやかな春の朝。
防人八葉は京都の旅館を出た。
他の生徒がまだ眠る中、なぜか一人早く。
いつもよりほんの少しだけ、顔を引き締めて。
いつもよりほんの少しだけ、強く心に誓って。
――今日こそは決戦である。
防人八葉は京都の旅館を出た。
他の生徒がまだ眠る中、なぜか一人早く。
いつもよりほんの少しだけ、顔を引き締めて。
いつもよりほんの少しだけ、強く心に誓って。
――今日こそは決戦である。
4月1日 AM9:00 行動開始――。
銀誓館に属する能力者が一斉に蛮声をあげた。
蛮声は僅かばかり、心を支配しようとする恐怖を押し返し能力者たちの足を前へと押し出していく。
「行くぞ、皆!」
「俺達は必ず勝つんだ!」
「無事に帰ってきてね!」
「生きて戻る!」
それぞれの思いが口をついて出ていた。
その声を合図に、侵攻開始の合図は下されたのだった。
奈良県御所市。いまや土蜘蛛一族の拠点と成り果てたその町並みに、能力者たちが駆け出していく。
いつも五月蝿いと他人から批判される八葉は一人、静かに駆け出した。
世界の平和を守る。口癖のように言っていたことを、今まさに実現するときが来たのだ。
コマンダーからの指示により、二ルートからの侵攻が決定されている。
八葉は南ルート。玉出地区を目指す。
比較的、「巣」から離れた玉出地区にはさほどの強敵はまだ配されていない。
次々と姿を現す能力者たちに、生まれて間もない蜘蛛童はなぎ倒されていく。
八葉もまた、数で押し寄せる蜘蛛童や鋏角衆を打ち倒していた。
緒戦における被害は皆無といってよかった。準備万端とはいえないものの、それ相応の準備をした能力者たちは数の不利をものともせず最初の戦いに勝利を収めたのだった。
八葉がいた玉出地区第11戦区でも、圧倒的勝利を収めている。
「皆無事かーーー!この調子でいこうぜーーーー!」
八葉の声は大きく、その戦区内にいた能力者たち全てに聞こえただろう。
次の目標は池ノ内、元町地区の制圧だった。
統率の取れた能力者たちは、この地区にいた土蜘蛛一族をも易々と併呑していく。
あっけないほどにこの地区にいた土蜘蛛一族は姿を消した。
銀誓館の面々は勢いづき、その勢いは戦場にいた能力者たちに少なからず、慢心を与えていたのかもしれない。
その慢心は次の戦区で最悪の形を成すことになる。
――同日 PM12:00 拠点攻略開始。
八葉の目の前には広大な敷地と、日本家屋がたたずんでいる。
通称蜘蛛屋敷。
土蜘蛛一族に協力する能力者、「土蜘蛛の巫女」の拠点。
同時に攻略されている迷宮古墳ともに、制圧せずにはいられない。
なぜならば。
これらの地域は女王の「無限繁栄」の力を濃く受けている。
それによって次々と生み出される蜘蛛達が、後々押し寄せてくることになるからだ。
このあと女王の領域に侵入する能力者にとって、背後の憂いは叩いておかなければならない。
既に戦いはいたるところで始まっていた。
怒声、悲鳴、剣戟音、爆発音。
全ての音が八葉がこれから臨む第52戦区での戦いの苛烈さを物語っていた。
「何、いつもどおりやろうぜ。ハチ」
八葉の隣には光り輝く頭を持つ男がたたずんでいた。伊丹・貴信。
先の池ノ内地区での戦いから、八葉に合流した彼は携えたチェーンソー剣『燈台守』をかざしてみせる。
「なんだ、レッドの癖にビビッてるのか? らしくないじゃないか」
「んなことねーよ! ・・・でもなんか。さっきから変な胸騒ぎがするんだよ」
「縁起でもないことを言うな。ハチ。お前の取り柄はイカレタ耐久力と、最強のポジティブシンキングだろう?」
「うるせーよ、ハゲ!よし、いくか!」
「承知!」
二人が駆け出そうとしたその瞬間。伝令役の生徒が青い顔をして走りよってきていた。
「校舎裏地球防衛隊団長、防人八葉さんですね?」
「おう!」
「同結社所属、闇夜・梟、玖凪・蜜琉、長谷川・柚奈、以上3名が・・・」
一気に血が昇る。頭突きを食らわさんばかりの勢いで伝令の生徒の胸倉を掴みあげる。
「皆がどうした!どうしたってんだよ!」
「落ち着け、ハチ!」
伊丹の静止も聞かず、生徒の胸倉を離そうともしない。
「・・・蜘蛛屋敷戦区内において・・・・重傷を、うけました・・・!」
「・・・・・・・・!!・・・・クソッ!」
その言葉に目を見開き、八葉は力なく拳を開く。
ようやく開放され、咳き込む伝令の生徒に、
「確認したい。その3名の後退は無事確認されたんだな?」
「はい。現在はメディックの方が治療を行っています。3人とも命には別状ありません」
それを聞いて八葉は伏せていた顔を上げた。少しだけほっとした表情が戻っている。
「わかった。ご苦労様。気をつけて戻ってくれ」
そういった伊丹に、さらにもう一言。
「・・・・あと、その」
意を決したように伝令の生徒は口を開く。
「同地区内の戦闘において・・・・・生徒2名の死亡が確認されました・・・ッ!」
――2名、死亡。
その声は八葉と伊丹のみならず、これから52戦区で戦う能力者たち全員に聞こえ渡った。
長い沈黙のときが続く。
「他に、何もないな。作戦の変更などは」能力者の誰かが尋ねる。
「ありません。包囲、殲滅です」
それだけ言うと、伝令の生徒は再び来た道を戻っていった。
「2名死亡、か。結社の仲間の重傷だけでもきついってのに」
伊丹が悲痛な面持ちで呟く。
「・・・・やる」
「ん?どうした、ハチ?」
「絶対に、ぶっ潰してやる!俺が!この拳で!皆の分も!絶対にだ!」
どん、と音が鳴り響き、舗装されたアスファルトがめくれ上がった。
「お前だけじゃない。俺達も、だ」
伊丹の声に、能力者全員が頷く。
そして、戦いは始まった。
「おあぁぁぁぁあああ!!」
敵の姿を目視するや否や、八葉は旋剣の構えを取る。
「「「バレットレイン!!」」」
能力者たちが一斉に放った銃弾の雨の中、八葉が雄たけびを上げて蜘蛛童に殴りかかった。
一撃で潰した蜘蛛童には目もくれず、怒りに燃えた八葉の瞳が獲物を求めて戦場を駆け巡る。
次々と現れる蜘蛛童、鋏角衆をなぎ倒していく。
「ふーーーーーっ!ふーーーーーっ!まだまだぁぁぁぁぁっ!」
がむしゃらに敵の群れを求めては突撃を繰り返す八葉を追い、伊丹もまた敵の群れのど真ん中へと踊りこんでいた。
「あのバカ。キレてるのはお前だけじゃねぇんだぞ」
唸りをあげた『燈台守』叩きつけ、切り裂き、そのままバレットレインを放つ!
周囲の敵をなぎ払い、八葉の背後に立つと、
「ハチ、少しは落ち着け!」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!こいつらゼッテェゆるさねーんだ!泣いて謝ってもぶっ潰すんだ!」
なおも突っ込もうとする八葉の進行方向に立ち、伊丹は思いっきり殴りつけていた。
「あー、いってぇ。おい、バカ。よーく聞いてその原始人並の頭に刻みつけろ」
「皆キレてる。お前だけじゃねぇ。だから突っ込むな。皆と力をあわせろ」
「こいつらは俺も許すつもりはない。だから殺す。俺と、お前でだ。校舎裏の皆の分も。いいか?ここが重要だ。よくその足りない頭に叩き込め!俺と!お前でだ!」
「立て、ハチ!突っ込むぞ!」
「言われなくても立ってやる!俺は倒れねぇ!あと、足りてねぇのはお前の髪の毛だハゲ!」
そのあとの第52戦区の戦いは苛烈を極めた。
銀誓館17名に対し、土蜘蛛一族は49。
戦力値にして327:809。2倍以上の戦力差を覆し、銀誓館側はこの戦区での勝利を収める事が出来た。
防人八葉の奮闘ぶりは凄まじく、この戦区での勲功1位という記録が残っている。
ほかの戦区でも同じく、この戦いによって銀誓館側は重要拠点のひとつ「土蜘蛛屋敷」の攻略において成功を収める事が出来たのだった。
ただし第52戦区17名中4名が重傷。
ほかの戦区でも多数の重傷者が出ていることだろう。
現にもう一つの重要拠点であり、同時に侵攻を開始した「迷宮古墳」は制圧には至っていない。
そして――
その重傷者の中には。伊丹・貴信の名前が記されていた。
「・・・ドジっちまった」
割れたサングラス。薄汚れ、青ざめた顔。衣服についた大量の血が生々しい。
「まったくだな、このハゲ。しょうがねぇからお前の分もぶっ飛ばしてきてやる!安心して寝てろ!」
いつものようににっと笑うと、八葉は拳を握り固め、伊丹の眼前へと差し出す。
「ああ、頼んだぜ、ハチ!」
その拳を軽くたたき、伊丹は走り去る八葉を見送った。
――同日 PM13:30 宮古地区戦線 第57戦区
春空に殷々と戦場の音が木霊する。
「む、貴様はハチではないか!」
腹ごしらえにカレーパンを食べながらも、朝が早かった所為かうとうとと寝かかっている八葉の鼓膜を大音声が劈いた。
その音量は八葉の叫び声に勝るとも劣らない。八葉のみならず周囲にいた生徒達も耳を押さえている。
「うげ、岩崎燦然世界!」指をさして八葉。
「なぜ私をフルネームで呼ぶのだ!」大仰に振舞いながら燦然世界。
「名前きりにくいんだよ!」八葉にしてはもっともな意見を、
「そうか!無事で何よりだ!」まったく聞いちゃいない。
岩崎燦然世界という変わった名前の、一応は余計かもしれないが一応、男装の女性(服装の所為か男性と思っている者もいるらしい)。最近八葉がよく通う結社『戦闘楽団デスパレード』の団長。
緑の髪に黒の特攻服、鉢巻といったいでたちで、八葉とは違った意味でどこにいても目立つ存在だ。
なぜか似たような雰囲気を持っている(と、八葉が思っている)ため、それなりに仲はよい。
八葉の場合、誰にでも馴れ馴れしいのだが。
「そっちこそ元気だなー。ほかの連中は?」
「うむ、それがな。まったくもってわからんのだッッ!」
「マジかよ。ミツルが怪我したぜ。クロダにぶっ飛ばすって伝えといてくれよ」
「何ッ!ミツルが怪我だと!それは由々しき問題だな。ハチよ!そのときは私も手を貸そう!」
どんと胸をたたいて岩崎は請け負った。
――請け負っていいのか?
まだもそもそとカレーパンをほおばる八葉を見て、岩崎は首をかしげた。
(何だこいつ、いつもよりも静かだな。らしくない)
「ハチ」
「なんだよ」
「お前のところ、何人重傷だ」
「・・・・4人」
(成る程、それでか)
かっと靴が音を立て、岩崎は八葉の目の前に立つ。
「さて、私は行くぞ。幾千万の蜘蛛を踏み越えて、私の戦場音楽を奏でるために!」
芝居がかった口調で握り拳を作り、高々と宣言は続く。
「先ほど白が重傷との報告を受けた!私のかわいい白を!というと何か勘違いされそうだが(ここだけ小声)この怒りを力に変えて。私は突き進むぞ!」
両手を広げ、座ったままの八葉を見据えると、
「お前はどうする!防人八葉!」
その言葉を聞くと、八葉は一気にカレーパンを頬張った。
喉に詰まって顔が見る見る真っ赤になり、置いてあったペットボトルのお茶で流し込む。
危機一髪の窮地から脱した八葉が元気よく飛び起きて、
「あーもーホントうるせぇな!わーったから!俺も行くから!とりあえず、粉塵爆発の用意をすんな!」
「何ッ!?ダメか!?」
「ダメか、じゃねーだろ!ダメにきまってんじゃん!」
「いや、ハチなら大丈夫かと思ってな」
「イヤイヤイヤ、大丈夫だけど!つーか俺狙いかよ!大丈夫とかそういう問題じゃねーじゃん!って、蜘蛛きてるし!」
「あ、大丈夫なんだ。ふーん大丈夫なんだふーん」
「聞けって!蜘蛛!クーーーーモーーー!来てるから!だから粉塵爆発の準備すんなって!あーーーーーーもーーーーーーーーーーーーーーー!めんどくせーーー!全部ぶっ飛ばしてやらぁ!」
二人は我先にと蜘蛛へと駆け出していく。
「バカは突っ走れ!私もだがな!」
「だな。落ち込んでるなんて俺らしくねーや!サンキュー!岩崎燦然世界!」
「だからなぜフルネーム!」
各戦区で重傷者が続発し、宮戸地区からの一時後退の決定が下されたのは1時間後。
だが、二人がいた第57戦区は、宮戸地区での数少ない勝利を収めていた。
「・・・お前、マジやんなよ・・・!」
「すまん。だが私は後悔はしていない!していないのだ!」
岩崎の粉塵爆発に巻き込まれた八葉は、重傷こそ負わなかったものの、仲良く力尽き、一時後退を余儀なくされていたのだった。
――同日 PM15:00 宮戸地区第10戦区
岩崎燦然世界とは救護所で別れ、別ルートから宮戸地区を目指している。
前線から少しはなれたところで八葉は休憩を取っていた。
八葉だけでなく、前線の程近い安全な場所ではほかの能力者たちも休憩している姿が見える。
メガリス破壊効果『生命賛歌』の力は絶大で、ほんの少し休憩しただけでも目に見えて体力の回復が違う。
だが、心の疲れまではそうはいかない。どの能力者たちも一様に疲労の色を顔に浮かばせていた。
それでも能力者たちは再び立ち上がり、戦場を目指していく。
友を守るため、どこかの誰かを守るために。
八葉もまたどこかの誰かを、そして結社の仲間を守るために再び歩き出そうとしていた。
「大将!」
「防人先輩」
たったと駆け寄る音が聞こえ、八葉が振り向く。
「お、式波に黒ちゃんじゃん。そっちも無事かー?」
「とりあえず、こっちもなんとか健在やで、大将!支援放火は任せとき!」
ガッツポーズで黒羽三郎がいうと、
「ああ。・・・ただ、今回は休憩に入る。女王の領域で会おう」
式波巧斗はカレーパンと何か飲み物を八葉に手渡した。
「お、さーんきゅー!って、『超絶炭酸全力MAX!』じゃん!すげーな!」
「防人先輩がよく飲んでいたのでな。買ってきておいた」
あくまで冷静に式波は言うと、遠くから聞こえ始めた音に耳を傾ける。
「あと少しだな」
「そうそう、忘れるとこやったわ!コマンダーからの指令や!今から宮戸に戦力回す方針が出とるそうやで、大将!これで一気に落としたいところやな!」
メディックらしからぬ砲戦装備を整えた黒羽が詠唱銃を構えた。
「落としたい、じゃねーぞ。絶対に落とす!んで、女王気取りのあの女の横っ面ぶっ飛ばしてやりに行くんだ!絶対に!」
「ふっ…流石大将やな!よっしゃ、やったるでぇ!!
そういって駆け出した八葉と黒羽を式波は申し訳なさそうに見送っていた。
「うわぁ!」
「右に回ったぞ!」
「ちょっとあなた、怪我をしたなら下がりなさい!」
「唸れ、『武尊』!超・絶・昇・天!地獄極楽撃ィィィィィィィ!!」
「くっそ・・・!悪い、後退する!」
「よし!次はどいつだ!」
「おおおおおおおおおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
宮戸地区に集まった能力者は、先の戦いで疲弊した土蜘蛛たちの数を超えていた。
単純な戦力差だけではない。
士気や装備といった戦力の倍増要素――
全てにおいて上回った銀誓館側は、見事全ての戦区において勝利を収めたのだった。
残りはついに、「女王の領域」を残すのみとなった。
ここに来て、さらに遅れて到着した能力者たちが合流を果たしている。
あと一つの必勝を。
ただそれだけを胸に、能力者たちはしばしの休憩を取る。
重傷を負った恋人を想うもの。
ただ一人、自分の力を信じるもの。
仲間の無事を祈るもの。
ともに戦う仲間と励ましあうもの。
そして、一人
本気でこの世界の平和を守ると覚悟を決めたものがいる。
「もう少しだ!皆頑張れ!俺たちは負けらんねーんだ!」
ここに来て尚、意気揚々と
防人八葉は一番に駆け出したのだった。
――同日 PM16:30 最終決戦開始
「二人とも無事だな!いよいよだ!全力でぶっ飛ばすぞ!『校舎裏地球防衛隊』の真価みせてやろうぜ!」
再び黒羽、式波の二人と合流した八葉は互いの拳をつき合わせていた。
「これが最後だ。全力をだそう!ここまできたら怪我はしょうがねぇ!だけど、二人とも絶対に生きてもどれよ!団長命令だからな!」
「よっしゃ、了解したで!フレイムキャノンが唸るでぇぇ!」
「わかった。二人とも無事に会おう」
互いの拳をぶつけ合い、そして、各々持ち場に着くために3人は思い思いの方向へと走り出していった。
<女王の領域 第1戦区>
まさしく女王への血路を拓くための戦いが始まった。双方ともに死力を尽くした戦いといっていいだろう。
総勢1900名にも及ぶ能力者は一斉に、今は女王の領域と化した校内へと押し進んでいく。
防人八葉は、女王と戦いに来たのではなかった。
仲間が女王の元にたどり着けるように道を切り開く事。
そのために自分が出来る事はただ一つだけだ、そう思っている。
そう、ほんの数時間前に岩崎燦然世界に言われたあの言葉。
「バカは!突っ走る!」
握り締めた拳に魔力の弾が装填される。踏みしめた足は仲間の思いが支える。
敵を見据える瞳には意志の力が宿り、
強靭な土蜘蛛を一撃で屠る。まだ痙攣している土蜘蛛の横を走り抜けて前へ。
「前へ!前へ!前へ!」
自分には突っ込むしか能がない。だから前へ。
自分がもし倒れたとしても、後には仲間がいる。彼らがきっとやってくれる。
それだけで八葉の足は前へと突き進む。
「邪魔だァァ!」
立ちはだかる敵をなぎ倒し、駆け抜け、必死で戦い抜いた。
誰も彼もが必死で、誰も彼もが懸命に戦い抜いた。
結果、女王は手傷を受け後退。銀誓館側は全戦区での勝利を手にしていた。
戦闘が終わり、気が抜けたように八葉はぼんやりと立っている。
報告では式波巧斗の重傷が確認されている。
ふと、足元の土蜘蛛を見る。身体の半分が八葉の詠唱兵器によって消し飛ばされ瀕死の状態だ。
「・・・・・我らを追いたて、貴様らは生き延びる。それが、正義か」
息も絶え絶えに声が聞こえた。
「そうだよ、化け物。ここは俺達の世界だからな。俺は、俺の仲間と人間を傷つけたお前らをぶっ潰すんだ!お前らが泣いて謝ったってもうゆるさねぇ!絶対に、この世界からお前ら化け物を消してやる!俺が!絶対にだ!」
「・・・くっくっく・・・浅薄なり・・・人間!」
最後の力を振り絞り、土蜘蛛が飛び掛る。
たとえ一人でも女王の脅威を消そうという彼らの信念なのだろうか。
血を吐きながら、ぼろぼろの身体が宙を舞う。
「意味わかんねぇよ!バカだから!俺は俺が決めた道を信じて突き進むだけだ!それが!たとえお前らにとって悪だろうと!俺はもう迷わねぇ!」
カウンター気味に土蜘蛛の顔面を捕らえた八葉の拳が爆発した。
顔を吹き飛ばされ、今度こそ絶命した土蜘蛛の死骸を背に、八葉は拳を振り上げる。
「皆ァァァァァァァァァァァァ!!!勝ったぞォォォォォォォォオオ!!!!!!!」
その声は天高く、茜色の空に包まれた御所市に響き渡った。
――4月1日 「土蜘蛛戦争」と呼ばれたこの戦いはようやく幕を下ろした。
十数名もの犠牲者と、多数の重傷者を出したこの戦いで銀誓館の生徒達が得たものは何だったろうか。
僅かばかりの勝利と平和。それらはほんの少しの事で揺らぐかもしれない。なくなってしまうかもしれない。
だが、防人八葉の胸には確かな何かが宿っていた。
それは、「決意」。
何があっても必ず守り抜くと決めたその心は、
防人八葉にとって大きな一歩となるのだった
銀誓館に属する能力者が一斉に蛮声をあげた。
蛮声は僅かばかり、心を支配しようとする恐怖を押し返し能力者たちの足を前へと押し出していく。
「行くぞ、皆!」
「俺達は必ず勝つんだ!」
「無事に帰ってきてね!」
「生きて戻る!」
それぞれの思いが口をついて出ていた。
その声を合図に、侵攻開始の合図は下されたのだった。
奈良県御所市。いまや土蜘蛛一族の拠点と成り果てたその町並みに、能力者たちが駆け出していく。
いつも五月蝿いと他人から批判される八葉は一人、静かに駆け出した。
世界の平和を守る。口癖のように言っていたことを、今まさに実現するときが来たのだ。
コマンダーからの指示により、二ルートからの侵攻が決定されている。
八葉は南ルート。玉出地区を目指す。
比較的、「巣」から離れた玉出地区にはさほどの強敵はまだ配されていない。
次々と姿を現す能力者たちに、生まれて間もない蜘蛛童はなぎ倒されていく。
八葉もまた、数で押し寄せる蜘蛛童や鋏角衆を打ち倒していた。
緒戦における被害は皆無といってよかった。準備万端とはいえないものの、それ相応の準備をした能力者たちは数の不利をものともせず最初の戦いに勝利を収めたのだった。
八葉がいた玉出地区第11戦区でも、圧倒的勝利を収めている。
「皆無事かーーー!この調子でいこうぜーーーー!」
八葉の声は大きく、その戦区内にいた能力者たち全てに聞こえただろう。
次の目標は池ノ内、元町地区の制圧だった。
統率の取れた能力者たちは、この地区にいた土蜘蛛一族をも易々と併呑していく。
あっけないほどにこの地区にいた土蜘蛛一族は姿を消した。
銀誓館の面々は勢いづき、その勢いは戦場にいた能力者たちに少なからず、慢心を与えていたのかもしれない。
その慢心は次の戦区で最悪の形を成すことになる。
――同日 PM12:00 拠点攻略開始。
八葉の目の前には広大な敷地と、日本家屋がたたずんでいる。
通称蜘蛛屋敷。
土蜘蛛一族に協力する能力者、「土蜘蛛の巫女」の拠点。
同時に攻略されている迷宮古墳ともに、制圧せずにはいられない。
なぜならば。
これらの地域は女王の「無限繁栄」の力を濃く受けている。
それによって次々と生み出される蜘蛛達が、後々押し寄せてくることになるからだ。
このあと女王の領域に侵入する能力者にとって、背後の憂いは叩いておかなければならない。
既に戦いはいたるところで始まっていた。
怒声、悲鳴、剣戟音、爆発音。
全ての音が八葉がこれから臨む第52戦区での戦いの苛烈さを物語っていた。
「何、いつもどおりやろうぜ。ハチ」
八葉の隣には光り輝く頭を持つ男がたたずんでいた。伊丹・貴信。
先の池ノ内地区での戦いから、八葉に合流した彼は携えたチェーンソー剣『燈台守』をかざしてみせる。
「なんだ、レッドの癖にビビッてるのか? らしくないじゃないか」
「んなことねーよ! ・・・でもなんか。さっきから変な胸騒ぎがするんだよ」
「縁起でもないことを言うな。ハチ。お前の取り柄はイカレタ耐久力と、最強のポジティブシンキングだろう?」
「うるせーよ、ハゲ!よし、いくか!」
「承知!」
二人が駆け出そうとしたその瞬間。伝令役の生徒が青い顔をして走りよってきていた。
「校舎裏地球防衛隊団長、防人八葉さんですね?」
「おう!」
「同結社所属、闇夜・梟、玖凪・蜜琉、長谷川・柚奈、以上3名が・・・」
一気に血が昇る。頭突きを食らわさんばかりの勢いで伝令の生徒の胸倉を掴みあげる。
「皆がどうした!どうしたってんだよ!」
「落ち着け、ハチ!」
伊丹の静止も聞かず、生徒の胸倉を離そうともしない。
「・・・蜘蛛屋敷戦区内において・・・・重傷を、うけました・・・!」
「・・・・・・・・!!・・・・クソッ!」
その言葉に目を見開き、八葉は力なく拳を開く。
ようやく開放され、咳き込む伝令の生徒に、
「確認したい。その3名の後退は無事確認されたんだな?」
「はい。現在はメディックの方が治療を行っています。3人とも命には別状ありません」
それを聞いて八葉は伏せていた顔を上げた。少しだけほっとした表情が戻っている。
「わかった。ご苦労様。気をつけて戻ってくれ」
そういった伊丹に、さらにもう一言。
「・・・・あと、その」
意を決したように伝令の生徒は口を開く。
「同地区内の戦闘において・・・・・生徒2名の死亡が確認されました・・・ッ!」
――2名、死亡。
その声は八葉と伊丹のみならず、これから52戦区で戦う能力者たち全員に聞こえ渡った。
長い沈黙のときが続く。
「他に、何もないな。作戦の変更などは」能力者の誰かが尋ねる。
「ありません。包囲、殲滅です」
それだけ言うと、伝令の生徒は再び来た道を戻っていった。
「2名死亡、か。結社の仲間の重傷だけでもきついってのに」
伊丹が悲痛な面持ちで呟く。
「・・・・やる」
「ん?どうした、ハチ?」
「絶対に、ぶっ潰してやる!俺が!この拳で!皆の分も!絶対にだ!」
どん、と音が鳴り響き、舗装されたアスファルトがめくれ上がった。
「お前だけじゃない。俺達も、だ」
伊丹の声に、能力者全員が頷く。
そして、戦いは始まった。
「おあぁぁぁぁあああ!!」
敵の姿を目視するや否や、八葉は旋剣の構えを取る。
「「「バレットレイン!!」」」
能力者たちが一斉に放った銃弾の雨の中、八葉が雄たけびを上げて蜘蛛童に殴りかかった。
一撃で潰した蜘蛛童には目もくれず、怒りに燃えた八葉の瞳が獲物を求めて戦場を駆け巡る。
次々と現れる蜘蛛童、鋏角衆をなぎ倒していく。
「ふーーーーーっ!ふーーーーーっ!まだまだぁぁぁぁぁっ!」
がむしゃらに敵の群れを求めては突撃を繰り返す八葉を追い、伊丹もまた敵の群れのど真ん中へと踊りこんでいた。
「あのバカ。キレてるのはお前だけじゃねぇんだぞ」
唸りをあげた『燈台守』叩きつけ、切り裂き、そのままバレットレインを放つ!
周囲の敵をなぎ払い、八葉の背後に立つと、
「ハチ、少しは落ち着け!」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!こいつらゼッテェゆるさねーんだ!泣いて謝ってもぶっ潰すんだ!」
なおも突っ込もうとする八葉の進行方向に立ち、伊丹は思いっきり殴りつけていた。
「あー、いってぇ。おい、バカ。よーく聞いてその原始人並の頭に刻みつけろ」
「皆キレてる。お前だけじゃねぇ。だから突っ込むな。皆と力をあわせろ」
「こいつらは俺も許すつもりはない。だから殺す。俺と、お前でだ。校舎裏の皆の分も。いいか?ここが重要だ。よくその足りない頭に叩き込め!俺と!お前でだ!」
「立て、ハチ!突っ込むぞ!」
「言われなくても立ってやる!俺は倒れねぇ!あと、足りてねぇのはお前の髪の毛だハゲ!」
そのあとの第52戦区の戦いは苛烈を極めた。
銀誓館17名に対し、土蜘蛛一族は49。
戦力値にして327:809。2倍以上の戦力差を覆し、銀誓館側はこの戦区での勝利を収める事が出来た。
防人八葉の奮闘ぶりは凄まじく、この戦区での勲功1位という記録が残っている。
ほかの戦区でも同じく、この戦いによって銀誓館側は重要拠点のひとつ「土蜘蛛屋敷」の攻略において成功を収める事が出来たのだった。
ただし第52戦区17名中4名が重傷。
ほかの戦区でも多数の重傷者が出ていることだろう。
現にもう一つの重要拠点であり、同時に侵攻を開始した「迷宮古墳」は制圧には至っていない。
そして――
その重傷者の中には。伊丹・貴信の名前が記されていた。
「・・・ドジっちまった」
割れたサングラス。薄汚れ、青ざめた顔。衣服についた大量の血が生々しい。
「まったくだな、このハゲ。しょうがねぇからお前の分もぶっ飛ばしてきてやる!安心して寝てろ!」
いつものようににっと笑うと、八葉は拳を握り固め、伊丹の眼前へと差し出す。
「ああ、頼んだぜ、ハチ!」
その拳を軽くたたき、伊丹は走り去る八葉を見送った。
――同日 PM13:30 宮古地区戦線 第57戦区
春空に殷々と戦場の音が木霊する。
「む、貴様はハチではないか!」
腹ごしらえにカレーパンを食べながらも、朝が早かった所為かうとうとと寝かかっている八葉の鼓膜を大音声が劈いた。
その音量は八葉の叫び声に勝るとも劣らない。八葉のみならず周囲にいた生徒達も耳を押さえている。
「うげ、岩崎燦然世界!」指をさして八葉。
「なぜ私をフルネームで呼ぶのだ!」大仰に振舞いながら燦然世界。
「名前きりにくいんだよ!」八葉にしてはもっともな意見を、
「そうか!無事で何よりだ!」まったく聞いちゃいない。
岩崎燦然世界という変わった名前の、一応は余計かもしれないが一応、男装の女性(服装の所為か男性と思っている者もいるらしい)。最近八葉がよく通う結社『戦闘楽団デスパレード』の団長。
緑の髪に黒の特攻服、鉢巻といったいでたちで、八葉とは違った意味でどこにいても目立つ存在だ。
なぜか似たような雰囲気を持っている(と、八葉が思っている)ため、それなりに仲はよい。
八葉の場合、誰にでも馴れ馴れしいのだが。
「そっちこそ元気だなー。ほかの連中は?」
「うむ、それがな。まったくもってわからんのだッッ!」
「マジかよ。ミツルが怪我したぜ。クロダにぶっ飛ばすって伝えといてくれよ」
「何ッ!ミツルが怪我だと!それは由々しき問題だな。ハチよ!そのときは私も手を貸そう!」
どんと胸をたたいて岩崎は請け負った。
――請け負っていいのか?
まだもそもそとカレーパンをほおばる八葉を見て、岩崎は首をかしげた。
(何だこいつ、いつもよりも静かだな。らしくない)
「ハチ」
「なんだよ」
「お前のところ、何人重傷だ」
「・・・・4人」
(成る程、それでか)
かっと靴が音を立て、岩崎は八葉の目の前に立つ。
「さて、私は行くぞ。幾千万の蜘蛛を踏み越えて、私の戦場音楽を奏でるために!」
芝居がかった口調で握り拳を作り、高々と宣言は続く。
「先ほど白が重傷との報告を受けた!私のかわいい白を!というと何か勘違いされそうだが(ここだけ小声)この怒りを力に変えて。私は突き進むぞ!」
両手を広げ、座ったままの八葉を見据えると、
「お前はどうする!防人八葉!」
その言葉を聞くと、八葉は一気にカレーパンを頬張った。
喉に詰まって顔が見る見る真っ赤になり、置いてあったペットボトルのお茶で流し込む。
危機一髪の窮地から脱した八葉が元気よく飛び起きて、
「あーもーホントうるせぇな!わーったから!俺も行くから!とりあえず、粉塵爆発の用意をすんな!」
「何ッ!?ダメか!?」
「ダメか、じゃねーだろ!ダメにきまってんじゃん!」
「いや、ハチなら大丈夫かと思ってな」
「イヤイヤイヤ、大丈夫だけど!つーか俺狙いかよ!大丈夫とかそういう問題じゃねーじゃん!って、蜘蛛きてるし!」
「あ、大丈夫なんだ。ふーん大丈夫なんだふーん」
「聞けって!蜘蛛!クーーーーモーーー!来てるから!だから粉塵爆発の準備すんなって!あーーーーーーもーーーーーーーーーーーーーーー!めんどくせーーー!全部ぶっ飛ばしてやらぁ!」
二人は我先にと蜘蛛へと駆け出していく。
「バカは突っ走れ!私もだがな!」
「だな。落ち込んでるなんて俺らしくねーや!サンキュー!岩崎燦然世界!」
「だからなぜフルネーム!」
各戦区で重傷者が続発し、宮戸地区からの一時後退の決定が下されたのは1時間後。
だが、二人がいた第57戦区は、宮戸地区での数少ない勝利を収めていた。
「・・・お前、マジやんなよ・・・!」
「すまん。だが私は後悔はしていない!していないのだ!」
岩崎の粉塵爆発に巻き込まれた八葉は、重傷こそ負わなかったものの、仲良く力尽き、一時後退を余儀なくされていたのだった。
――同日 PM15:00 宮戸地区第10戦区
岩崎燦然世界とは救護所で別れ、別ルートから宮戸地区を目指している。
前線から少しはなれたところで八葉は休憩を取っていた。
八葉だけでなく、前線の程近い安全な場所ではほかの能力者たちも休憩している姿が見える。
メガリス破壊効果『生命賛歌』の力は絶大で、ほんの少し休憩しただけでも目に見えて体力の回復が違う。
だが、心の疲れまではそうはいかない。どの能力者たちも一様に疲労の色を顔に浮かばせていた。
それでも能力者たちは再び立ち上がり、戦場を目指していく。
友を守るため、どこかの誰かを守るために。
八葉もまたどこかの誰かを、そして結社の仲間を守るために再び歩き出そうとしていた。
「大将!」
「防人先輩」
たったと駆け寄る音が聞こえ、八葉が振り向く。
「お、式波に黒ちゃんじゃん。そっちも無事かー?」
「とりあえず、こっちもなんとか健在やで、大将!支援放火は任せとき!」
ガッツポーズで黒羽三郎がいうと、
「ああ。・・・ただ、今回は休憩に入る。女王の領域で会おう」
式波巧斗はカレーパンと何か飲み物を八葉に手渡した。
「お、さーんきゅー!って、『超絶炭酸全力MAX!』じゃん!すげーな!」
「防人先輩がよく飲んでいたのでな。買ってきておいた」
あくまで冷静に式波は言うと、遠くから聞こえ始めた音に耳を傾ける。
「あと少しだな」
「そうそう、忘れるとこやったわ!コマンダーからの指令や!今から宮戸に戦力回す方針が出とるそうやで、大将!これで一気に落としたいところやな!」
メディックらしからぬ砲戦装備を整えた黒羽が詠唱銃を構えた。
「落としたい、じゃねーぞ。絶対に落とす!んで、女王気取りのあの女の横っ面ぶっ飛ばしてやりに行くんだ!絶対に!」
「ふっ…流石大将やな!よっしゃ、やったるでぇ!!
そういって駆け出した八葉と黒羽を式波は申し訳なさそうに見送っていた。
「うわぁ!」
「右に回ったぞ!」
「ちょっとあなた、怪我をしたなら下がりなさい!」
「唸れ、『武尊』!超・絶・昇・天!地獄極楽撃ィィィィィィィ!!」
「くっそ・・・!悪い、後退する!」
「よし!次はどいつだ!」
「おおおおおおおおおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
宮戸地区に集まった能力者は、先の戦いで疲弊した土蜘蛛たちの数を超えていた。
単純な戦力差だけではない。
士気や装備といった戦力の倍増要素――
全てにおいて上回った銀誓館側は、見事全ての戦区において勝利を収めたのだった。
残りはついに、「女王の領域」を残すのみとなった。
ここに来て、さらに遅れて到着した能力者たちが合流を果たしている。
あと一つの必勝を。
ただそれだけを胸に、能力者たちはしばしの休憩を取る。
重傷を負った恋人を想うもの。
ただ一人、自分の力を信じるもの。
仲間の無事を祈るもの。
ともに戦う仲間と励ましあうもの。
そして、一人
本気でこの世界の平和を守ると覚悟を決めたものがいる。
「もう少しだ!皆頑張れ!俺たちは負けらんねーんだ!」
ここに来て尚、意気揚々と
防人八葉は一番に駆け出したのだった。
――同日 PM16:30 最終決戦開始
「二人とも無事だな!いよいよだ!全力でぶっ飛ばすぞ!『校舎裏地球防衛隊』の真価みせてやろうぜ!」
再び黒羽、式波の二人と合流した八葉は互いの拳をつき合わせていた。
「これが最後だ。全力をだそう!ここまできたら怪我はしょうがねぇ!だけど、二人とも絶対に生きてもどれよ!団長命令だからな!」
「よっしゃ、了解したで!フレイムキャノンが唸るでぇぇ!」
「わかった。二人とも無事に会おう」
互いの拳をぶつけ合い、そして、各々持ち場に着くために3人は思い思いの方向へと走り出していった。
<女王の領域 第1戦区>
まさしく女王への血路を拓くための戦いが始まった。双方ともに死力を尽くした戦いといっていいだろう。
総勢1900名にも及ぶ能力者は一斉に、今は女王の領域と化した校内へと押し進んでいく。
防人八葉は、女王と戦いに来たのではなかった。
仲間が女王の元にたどり着けるように道を切り開く事。
そのために自分が出来る事はただ一つだけだ、そう思っている。
そう、ほんの数時間前に岩崎燦然世界に言われたあの言葉。
「バカは!突っ走る!」
握り締めた拳に魔力の弾が装填される。踏みしめた足は仲間の思いが支える。
敵を見据える瞳には意志の力が宿り、
強靭な土蜘蛛を一撃で屠る。まだ痙攣している土蜘蛛の横を走り抜けて前へ。
「前へ!前へ!前へ!」
自分には突っ込むしか能がない。だから前へ。
自分がもし倒れたとしても、後には仲間がいる。彼らがきっとやってくれる。
それだけで八葉の足は前へと突き進む。
「邪魔だァァ!」
立ちはだかる敵をなぎ倒し、駆け抜け、必死で戦い抜いた。
誰も彼もが必死で、誰も彼もが懸命に戦い抜いた。
結果、女王は手傷を受け後退。銀誓館側は全戦区での勝利を手にしていた。
戦闘が終わり、気が抜けたように八葉はぼんやりと立っている。
報告では式波巧斗の重傷が確認されている。
ふと、足元の土蜘蛛を見る。身体の半分が八葉の詠唱兵器によって消し飛ばされ瀕死の状態だ。
「・・・・・我らを追いたて、貴様らは生き延びる。それが、正義か」
息も絶え絶えに声が聞こえた。
「そうだよ、化け物。ここは俺達の世界だからな。俺は、俺の仲間と人間を傷つけたお前らをぶっ潰すんだ!お前らが泣いて謝ったってもうゆるさねぇ!絶対に、この世界からお前ら化け物を消してやる!俺が!絶対にだ!」
「・・・くっくっく・・・浅薄なり・・・人間!」
最後の力を振り絞り、土蜘蛛が飛び掛る。
たとえ一人でも女王の脅威を消そうという彼らの信念なのだろうか。
血を吐きながら、ぼろぼろの身体が宙を舞う。
「意味わかんねぇよ!バカだから!俺は俺が決めた道を信じて突き進むだけだ!それが!たとえお前らにとって悪だろうと!俺はもう迷わねぇ!」
カウンター気味に土蜘蛛の顔面を捕らえた八葉の拳が爆発した。
顔を吹き飛ばされ、今度こそ絶命した土蜘蛛の死骸を背に、八葉は拳を振り上げる。
「皆ァァァァァァァァァァァァ!!!勝ったぞォォォォォォォォオオ!!!!!!!」
その声は天高く、茜色の空に包まれた御所市に響き渡った。
――4月1日 「土蜘蛛戦争」と呼ばれたこの戦いはようやく幕を下ろした。
十数名もの犠牲者と、多数の重傷者を出したこの戦いで銀誓館の生徒達が得たものは何だったろうか。
僅かばかりの勝利と平和。それらはほんの少しの事で揺らぐかもしれない。なくなってしまうかもしれない。
だが、防人八葉の胸には確かな何かが宿っていた。
それは、「決意」。
何があっても必ず守り抜くと決めたその心は、
防人八葉にとって大きな一歩となるのだった
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うむっ!!
フハハハハハハおのれハチ!!
面白いではないか。面白いではないか!
第四ターンの苛烈な戦闘の様子を昨日のことのように思い出す…!(昨日のことです)
後悔はしていないぞ!いろいろ!!
-----
背後です!どもです~!
ありがとうございます~!そうそう、同じ部隊だったんですよね。
てか台詞も行動も実に「らしく」て嬉しいやら恥ずかしいやら!お見事です。絶対こんな会話してたはずですこの二人(笑
ちなみに粉塵爆発は積んでませんでしたが、確かにこの方がおいしいかと。
この御礼参りはそのうち!つかリンクしていいですか?
面白いではないか。面白いではないか!
第四ターンの苛烈な戦闘の様子を昨日のことのように思い出す…!(昨日のことです)
後悔はしていないぞ!いろいろ!!
-----
背後です!どもです~!
ありがとうございます~!そうそう、同じ部隊だったんですよね。
てか台詞も行動も実に「らしく」て嬉しいやら恥ずかしいやら!お見事です。絶対こんな会話してたはずですこの二人(笑
ちなみに粉塵爆発は積んでませんでしたが、確かにこの方がおいしいかと。
この御礼参りはそのうち!つかリンクしていいですか?
いらっさいませ
ハイどうも今日は岩崎燦然世界!(やはりフルネーム
絶対こんな会話だと思います。
ハチは自分のキャラなので動かしやすいのは当然何ですが
いやー・・・岩崎燦然世界は動かしやすいなぁ。
自分の知り合い(SR以前からの)のキャラというわけでもないのに
遠 慮 な く や れ る の は な ぜ だ ろ う 。
いいキャラですネ!
リンクはどしどしどうぞー。
こちらも張替えしておきますのでー。
絶対こんな会話だと思います。
ハチは自分のキャラなので動かしやすいのは当然何ですが
いやー・・・岩崎燦然世界は動かしやすいなぁ。
自分の知り合い(SR以前からの)のキャラというわけでもないのに
遠 慮 な く や れ る の は な ぜ だ ろ う 。
いいキャラですネ!
リンクはどしどしどうぞー。
こちらも張替えしておきますのでー。
ぶふっ
す、スイマセン…!
シリアスのつもりで読んでたのに、岩崎さんが出ていらした
あたりから、なんかこう……ブホッ。
いや笑い事じゃないのは(一応)分かってるんですが!
ナイスなコンビネーションプレイ(?)ですねっ。
ともあれ、ハチセンパイはさすがと言うか、ご無事で何よりでした。
至る所怪我人さんだらけで、大変だったみたいですね…。
お疲れ様でした!
シリアスのつもりで読んでたのに、岩崎さんが出ていらした
あたりから、なんかこう……ブホッ。
いや笑い事じゃないのは(一応)分かってるんですが!
ナイスなコンビネーションプレイ(?)ですねっ。
ともあれ、ハチセンパイはさすがと言うか、ご無事で何よりでした。
至る所怪我人さんだらけで、大変だったみたいですね…。
お疲れ様でした!
おありがとうござンした!!
美味しい所での登場、実に嬉しい!
直接登場するのも嬉しいですが、これもまた絶妙でやすね。
物語もいよいよ佳境、楽しみにさせて頂きやす!
PL:
こちらでは初めまして!
お世話になっております、白の背後です。
防人兄さんは大変に親近感沸く、熱いお兄さんで…大好きです(笑)
何かでご一緒することあれば、宜しくしてやってください。
ありがとうございました!
直接登場するのも嬉しいですが、これもまた絶妙でやすね。
物語もいよいよ佳境、楽しみにさせて頂きやす!
PL:
こちらでは初めまして!
お世話になっております、白の背後です。
防人兄さんは大変に親近感沸く、熱いお兄さんで…大好きです(笑)
何かでご一緒することあれば、宜しくしてやってください。
ありがとうございました!
いらっさい
白背後様>
炎を燃えさからせる燃料役お疲れ様です!
重傷した人は今回結構おいしい役になってます。
校舎裏のメンバーとか。
ハチは誰にでもなれなれしく、どんなボールでもキャッチする特性を備えてますので、親しみやすいのだと思われます。
まァ、一言で言うと
バカなんですけども。
残りもうちょっと、頑張りますw
炎を燃えさからせる燃料役お疲れ様です!
重傷した人は今回結構おいしい役になってます。
校舎裏のメンバーとか。
ハチは誰にでもなれなれしく、どんなボールでもキャッチする特性を備えてますので、親しみやすいのだと思われます。
まァ、一言で言うと
バカなんですけども。
残りもうちょっと、頑張りますw
完結。
ようやく終わりました。
時間かかりますねー。シナリオマスターは頑張りやサンですね。
知り合いでも動かすの難しいんだけど俺。
つーかきっと普通の女子キャラは動かせなさそうな予感。
そんなこんなで完結。
感想お待ちして ま す
苦情その他は聞きません。
あー、いい加減体育館裏ーズのGTも終わらせなきゃなーorz
時間かかりますねー。シナリオマスターは頑張りやサンですね。
知り合いでも動かすの難しいんだけど俺。
つーかきっと普通の女子キャラは動かせなさそうな予感。
そんなこんなで完結。
感想お待ちして ま す
苦情その他は聞きません。
あー、いい加減体育館裏ーズのGTも終わらせなきゃなーorz
無題
…自分から【無事に会おう】と言っておいて重傷を負ってしまってすまなかった。
やはり、防人先輩は強いな。
…執筆完成、お疲れさまだ。
~~~~~~~~~
え~と、背後です。書き込みでは初めまして。
巧斗、あんまり戦闘出てないのにかっこよく書いていただきありがとうございます!
差し入れの気配りとか、申し訳なさとか、誓いとか…。
読んでて違和感なかったので、(私は駄文どころか稚拙文ですが)同じ文章書きとして感心と尊敬を。
私の場合、動かすのが難しいどころか人様のPC動かす度胸が無いチキンなもので;
執筆お疲れさまです!
やはり、防人先輩は強いな。
…執筆完成、お疲れさまだ。
~~~~~~~~~
え~と、背後です。書き込みでは初めまして。
巧斗、あんまり戦闘出てないのにかっこよく書いていただきありがとうございます!
差し入れの気配りとか、申し訳なさとか、誓いとか…。
読んでて違和感なかったので、(私は駄文どころか稚拙文ですが)同じ文章書きとして感心と尊敬を。
私の場合、動かすのが難しいどころか人様のPC動かす度胸が無いチキンなもので;
執筆お疲れさまです!
うお
式波背後様>
見つかるのはええw
違和感無いですか、よかったス。
ハチやハチの周りにバカが多い分、優等生的なポジションにいる式波君を描写するのがとても難しかったス。
いや、自分もバカなのでですが!
尊敬とかしないほうがイイスヨー。
バカですから(゚∀゚)
ともあれ、ご来訪感謝ッス!
見つかるのはええw
違和感無いですか、よかったス。
ハチやハチの周りにバカが多い分、優等生的なポジションにいる式波君を描写するのがとても難しかったス。
いや、自分もバカなのでですが!
尊敬とかしないほうがイイスヨー。
バカですから(゚∀゚)
ともあれ、ご来訪感謝ッス!
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それ以外のカテゴリはオールRP発言
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銀誓学園 辺見ヶ原キャンパス
3年7組
称号「最強ポジティブシンキング男」
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